大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和28年(オ)1178号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人重富義男、同佐藤英一の上告理由第一点について。

所論原判示は、所論不動産についての所有権移転登記が日本観光株式会社から杵屋正彦に対してなされていることにつき、当事者間に争なき趣旨を判示したものと認められるから、原判決には所論のような違法はない。論旨は理由がない。

同第二点について。

原判決は、上告人所有の土地を要役地とし本件土地を承役地とする通行地役権が設定されたとの上告人の主張については、これを肯認させるに足る疏明がない、と判示しているのである。それ故所論は、原判決の結論に影響のない民法一七七条の解釈に関する原判示を、独自の見解を前提として非難するに帰し、採用することができない。

同第三点、第四点及び第六点について。

原判決は、上告人の地役権の時効取得に関する主張を排斥するにつき、第一審判決の理由を引用しているのであつて、両者の間には何等の齟齬も存しない。従つて論旨第三点に主張するような違法はない。

民法二八三条による通行地役権の時効取得については、いわゆる「継続」の要件として、承役地たるべき他人所有の土地の上に通路の開設を要し、その開設は要役地所有者によつてなされることを要するものと解すべくこれと同趣旨に出でた原審の判断は相当である。論旨第四点及び第六点はいずれも独自の見解を前提として原判決を攻撃するものであるから採用することができない。

同第五点について。

袋地である上告人所有の土地のための最少限度の通路としては、字押出一三三番の一四の土地を以て足り、字東山一七一〇番の四の土地を必要としないとする趣旨の原判示は、相当と認められるから、論旨は理由がない。後段所論の大審院判例は本件に適切でない。

同第七点について。

所論の原判示は、仮りに本件土地を承役地とする上告人主張の地役権設定契約があつたとしても、これにつき登記なき以上、その後において承役地の所有権を取得した被上告人に対抗し得ないとする趣旨であつて所論のように時効による地役権取得に関し、登記の欠缺を云為するものではない。そうして原判決は本件について地役権の時効取得を否定しているのであるから、所論のような対抗要件に関しては問題を生ずる余地がない。論旨は採用することができない。

よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例